経験学習入門を読んだ。
- 作者: 松尾睦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2011/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最近答えが無い仕事が増えている。考えて考え尽くしても、選択肢が1つにならない。とにかく何かに決めてやらざるを得ない。となると、やりっぱなしではなく、やったことからフィードバックを得て学習していかなければ進歩がない。だから、学習し続けなければならない。リーンやアジャイルの考え方もそうだし、個人としてもそう。この本は、その時に何が大事なのかが書かれている。
学習に必要なフィードバックループ
マネージャーの成長を決める経験とは何か、という調査結果が書かれており、このような結果だったとのこと。
- 直接経験:70%
- 他者の観察、アドバイス:20%
- 読書・研修:10%
特にエンジニアやデザイナーのような職種はもう少しインプットの量が大事な気がするが、経験からが最も学習できるというのは同感だ。経験から学んだことを未来に活かすということはやらないともったいない。
必要なのは内省だ。「経験する→内省する→教訓を引き出す→新しい状況に適用する」ということを繰り返すことにより、学習が積み上がり、現実に適応できるようになる。アジャイルのレトロスペクティブと同じように、個人でも常に内省する時間をとることが大切だと思う。
過去の経験や成功体験にこだわり、環境変化に適応できなくなっていくのを「能力的惰性」というそうだ。自分にも思い当たるし、そのような人や環境は見たことがある。そこでこの本にかかれているのが、「アンラーン」だ。これは、時代遅れに鳴った知識を捨てることを指す。もともと組織学習の概念らしいが、個人でも当てはまるとのこと。
私自身、この必要性はすごく感じていて、自分自身が変化を前提に仕事をすることを選んだ以上、環境も含めていろいろなことを捨てながら、新しいことに挑戦せねばならぬ、と言い聞かせてやってはいる。まぁただ単純に飽きっぽいということもあるが。でも、それはそんなに簡単ではなくて、やったことないことをやるのは、結構苦しみが伴う。
その時に必要だなと思うのは、この本にも書かれているが、「できることをテコにして挑戦を広げる」だと思う。まったくやったことが無いことをやり続けるのではなく、できること、やってきたことに加えて新しいことを付加していく。少しずつでも新しいことを追加していけば、時間が立つとどんどん経験が広がっていくし、飽きない。
経験から学ぶ力の三要素
- ストレッチ
- 問題意識を持って、新規性のある課題に取り組む
- リフレクション
- 行為を振り返り、知識・スキルをみにつけ修正する
- エンジョイメント
- 仕事のやりがいや意義を見つける
日本語で言うと、挑戦、振り返り、楽しむ、ということだと思う。ストレッチというのは、とにかく高い目標を掲げるということを言う人も多いが(私も昔そういう経営コンサルをされたことがある)、私はそれはあまりよくないと思う。現実性が無いと、その目標は存在意義がなくなってしまう。重要なのは、やったことがない新しいことであったり、今までの自分と比較して少しだけ高い目標であるということだろう。
エンジョイメントは、この本ではどんな仕事でもやりがいや意図を見つける、とあった。それも特に初心者の時期は重要だと思うが、今の時代はもっとシャープである必要があるのではないかと思う。この落合陽一さんのコメントにもあるが、本当に自分に合うこと、やりたことを追求し、ポジションを取り続けることが大切なのではないか。そうすれば、自然にストレッチになるし、自分も含め他人もあまりやったことが無いことをやるには、リフレクションが必要になる。そこまで目指さないと、変化が激しく答えのない今後の時代は、本質的なエンジョイメントを達成するのは難しいのではないかと思う。
思いとつながり
- 思い
- 自分のため、他者のため。
- 自分への思いと他者への思いが融合する時、大きな成長のエネルギーになる。
- 自分への思いには、認められたいという「業績目標」と成長したいという「学習目標」がある。これも融合するとエネルギーになる。
- つながり
- 多用で深い関係
- 職場外から率直な意見を聞く
- 人を選び、誠実につきあう
- 自ら発信し、相手を受け入れる
思いは大切。信念のようなものも含めて、一生かけて何をやっていくんだという思いがあると、いろいろなことを前に進められるような気がする。あと、会社にいると「業績目標」がすべての物差しになりがちだが、私はこれはかなりデメリットが有ると思う。周りを見ていると、「学習目標」があり、成長したいと思う人のほうが、最終的には業績目標も達成していると思う。両方バランスを持ってやっていかなければ、最終的に業績目標自体も達成できないのではないかと思う。
あと、つながりについては、以下の発達的ネットワークのタイプが面白かった。起業家的ネットワークが一番有効だというのは私も最近実感している。同じような思いや経験を持っている人たちとつながりを持ち、普段の悩みや課題を話したり、うまくいったことを話しながらフィードバックをもらうというのはとても有効だ。私ももっとこういう方々を増やしていけるように頑張っていきたいと思う。
学習は重要だ!
とは思う。エンジニアやデザイナーの仲間たちは、常に学習している人が多い。当然成長もしているし、経験もアウトプットも変わってきている。どうもそれ以外の人たちはそうでもない人が多いらしい。
結果を求めるのは重要だが、結果を出すためには何が必要なのか、ということを考えると、学習が重要だ。そうしないと工夫も効率も生まれない。なんとなくだが、学習自体が一般的ではないからこそ、なかなか日本の会社の生産性が上がらないのではないか。ここにも書いたが、緊急度は低いが重要度が高いことに対する投資と思い、組織としても個人としても学習し続ける必要があると思う。