思考と現場の間で

「いいサービスづくり」のために、組織づくりやソフトウェア設計など、考えていることを書きます

奇跡を起こせない人の生き残り戦略

最近、エンジニアリングマネジメントからプロダクトマネジメントに軸足を移しつつある。元々自分はものづくりがしたい、という欲求があることは以前から気づいたものの、いくつかの理由で機会に恵まれなかった。

ありがたいことに、1年前に独立してから、プロダクトを作る(プロダクトマネジメント)の機会をいただくことができた。自分でもプロダクトを作っている。充実感を感じる。

一方で、とても難しさも感じる。インタビューをしながらユーザの課題を特定し、UXを考え、それをビジネスとして成立させることを目指す。簡単に答えが見える領域ではなく、経験も足りずに勘が働かない。何かを作ってもユーザに全然響かない。

それでも少しずつわかってきてはいる。課題を特定すること。ふさわしいソリューションを提供すること。それをわかりやすい言葉で伝えること。(できれば自動的に)価値がお金に変わること。実は非常にシンプルなモデルであるのではないかと。

自分の課題は「作りたいものを作ってしまう」ことである。独りよがりであり自分本位、つまりその必要性を感じる人は1人(n=1)である。プロダクトで多くの人に価値を感じてもらうためにはx人(n=x)をターゲットにする必要がある。

個人の人生においては、「作りたいものを作る」でもいいかもしれない。それが結果的に多くの人に受け入れられることがあれば、とてもハッピーだ。ただ、残念ながらそれができるのは一握りの人間であり、奇跡だ。大部分の人は奇跡を作れない。

その奇跡的なアウトプットは人の感動を生んだり人生や生活を大きく変えることがまれにある。それは感動的だし、ひとりの消費者としては触れていたい。でも、人生は奇跡だけで構成されていないし、提供者としては少なくとも僕は奇跡を起こせない。

だから、n=xにしていく必要があるんだと思う。そして、n=1をn=xにしていく行為自体が学びと思っている。その学びこそが、奇跡を起こせない人の生きる道の一つではないだろうか。