思考と現場の間で

「いいサービスづくり」のために、組織づくりやソフトウェア設計など、考えていることを書きます

最前線のリーダーシップ

今まで、組織をより良くしようとか、組織長として変化させていくとか、色々なことにチャレンジしてきた。その都度思ったのは、リーダーシップを持って何かを変えようとすると、とてもしんどい体験とセットになるということだ。

支持して一緒にやってくれる人もいる反面、反対したり、罵倒されたり、下手すると嫌われたり恨まれたりすることもある。それは当然自分のやり方が良くなかった部分もありつつ、そのような可能性が必ずセットになる。そんな環境の中で、成功も多かったが、失敗も多かった。

それは一体何なんだろうとか、もう少し上手くできないものか、と考える中で、リーダーシップは何かと考えるようになった。だからコーチもやって、自分や他のみなさんがどのようにリーダーシップと向き合っているのかというのを突き詰めてみているわけだが、そこで一つの答えを与えてくれている本に出会った。それが「最前線のリーダーシップ」という本だ。

イントロダクションに出てくるこの言葉から「あ、そういうことか」と思わせてくれた。

リーダーとして行動することは
危険に身を晒して生きることだ

[新訳]最前線のリーダーシップ――何が生死を分けるのか

[新訳]最前線のリーダーシップ――何が生死を分けるのか

リーダーシップのリスク

まず、リーダーとして取り組む課題は、技術的問題と適応課題を2種類あると述べられている。技術的問題はある意味「やればいい」という課題だが、概ね解決するハードルが高くなるのは「適応課題」の方だ。これは自分が何かリーダーシップを取ることで、組織または他人に対して「変わってくれ」と突きつけることである。

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そうすると、抵抗を受けることになる。「変わること」というのはつまり「現状を喪失すること」にもつながるためだ。現状を喪失したい人は少ないため、そこに抵抗が発生してしまう。そうすると、以下のように4つのリスクが発生することになる。何かしらリーダーシップを取ったことがある人は、見に覚えがあるのではないだろうか。

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生き残る方法

そのリスクに対して生き残る方法は、5つ示されている。それぞれ、大なり小なり、リーダーシップを発揮し何かを成し遂げようととすると、現実的に行うべき選択肢になる。ここ最近、リーダシップの発揮の方法は変わってきており、例えばトップダウンボトムアップか、リーダーシップかフォロワーシップか、組織かプロジェクトか、のような話があるが、様々な課題や環境があるなか、何かをしようとすると、どんなやり方であれこのような現実的な対処法が必ず含まれることになる。

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私自身、トップダウンの組織は好まないし、ルールががんじがらめの組織は面白くないし、もっとうまくいく方法が無いかと10年ほど模索してきた。アジャイルスクラムやその他の考え方に出会い、その優れた考え方に乗っかりながら上手く行ったこともあったが、何か今までと違うことをやろうとしたときに、もっと根本的に自分自身の仕事に対峙する際の姿勢や、考え方、哲学のようなものを持たないと、上手くやるどころか自分を保てないということに気づいた。

そういう意味でここに書かれている方法、しかも「生き残る」というある意味切迫している状況に対する対処は、とても現実的であり必要なことだと思う。

リーダーシップの危機と自分を知ること

リーダーシップを失わせるには、自滅させるのが手っ取り早いと述べられている。スキャンダルなどで政治家が失脚したりする日常茶飯事のニュースはまさにそういうことだろう。そのきっかけになるのは「欲求」だ。

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何かをしようとすると多かれ少なかれしんどいことになるので、そこと付き合っていくことになる。同時にどうしても苦しくなると、楽な方向に行きたくなる気持ちもよく分かる。でもその欲求にコントロールされてしまうと自滅する。欲求をコントロールする側で居続けなければならない。

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そのために、上記の3点が述べられているのだが、最も重要なのは、「自分を知ること」ではないか。自分の状況がわかれば、欲求にコントロールされているのか気づく可能性があるし、何をしたいのかを知ることができれば、するべきではにことをやらない選択をすることができる。そのためにという意味で、このような言葉が述べられていた。

「自分を知り、欲しいものについて正直になり、
その後、そうした人間らしい欲求を大切に扱おう」

大変だけどリーダーシップは価値がある

これを見ても、強くリーダーシップを発揮するのはとても大変なことがわかる。「出世したくない」人が増えるのもよくわかる。それでもここまで苦労してリーダーシップを発揮する目的は何なのだろうか。

本書で書かれているような愛や好奇心であったり、それだけではなく怒りが原動力になる人もいるだろうし、目的は人それぞれだと思う。共通的には、何か今より変えたい、より良くしたいという部分が少なからずあるのではないだろうか。その結果失敗するかもしれないし成功するかもしれないが、そのチャレンジは尊いものだと思う。成功すればその価値は大きくなる。ただそのためには、自分の在り方を考え、研鑽を積まなければならない、というだけだ。

私自身、元々引っ込み思案で、リーダーシップを発揮できるような子供ではなかった。でも目の前の課題を目の当たりにして、たくさんの失敗をしながら何とか少しずつリーダーシップを発揮してる部分が増えてきた(もちろん質的にはまだまだだが)。そう考えると、リーダーシップというのは、生まれながらに持っていたり、幼少期から苦労していたりした人が発揮するだけのものではなく、普通の人が誰でも発揮できて再現性があるのではないかと感じる。そういう意味で、もっとこの分野を突き詰めていきたいと思わせてくれた本だった。