思考と現場の間で

「いいサービスづくり」のために、組織づくりやソフトウェア設計など、考えていることを書きます

「1年前に想像すらしていなかったことをやっている」状態を作る

前回のエントリー(ルールを「変化」させ続けられることが組織力になる)の続きです。

エントリーは、マネージャーだけでなく全員が、根本的なルールから変化をさせ続けることが組織力になる、という話でした。それが実現できるとどうなるのでしょうか。私の中で一つの指標があります。それが

「1年前に想像すらしていなかったことをやっている」人が多くいる

という状態を作れているかどうかです。

小さい変化を繰り返して予測した以上の変化を起こす

こう聞くと大きな変化をたくさん起こさなければならないように感じてしまうかもしれませんが、そうではありません。小さい変化をいかにたくさん起こすかにかかっています。その積み重ねの上で、行うべき大きな変化も見え、結果的に大きな変化が起きることもあります。

組織の意思だけではなく、現場の意思でそうなっていることが大切

変化というものは例えば経営層のような上位層が起こすものというイメージがあるかもしれません。そうだとしても、実際に変化するのは現場のメンバーになります。上位層が起こそうとしている変化と、現場の感覚がずれてしまっては起こす変化の量も効果も少なくなりますよね。

そう考えると、基本的に変化は現場のメンバーから起こすほうが効率的です。その小さな変化の積み重ねに、経営層のような上位層の変化の方向を合わせればいいだけです。現場の小さな変化や成功を見逃さずそれに合わせて組織全体を変えていく。これが基本です。

現場がトリガーになるということは、現場の意思が多く入っていることになります。自分たちで判断したことはモチベーションも上がりますし、実行力もあるはずです。また、個人としてのキャリアにもつながっているとより良い効果があります。そういう意味で、個人と現場と組織の変化し合いによる相乗効果によって、全体をドライブしていくということが必要になります。

大きな変化を起こすための3つのポイント

そのような変化を起こすためにはどうすればいいかという意味で、3つのポイントに整理してみました。

1.メンバーがどうしたいのか、どうすべきだと思うのかを優先する
多くの組織は、組織のやりたいことにメンバーを合わせに行こうとしますが、それではコストがかかりアウトプットの質が上がるまで時間がかかります。逆に、メンバーの意向やできることに組織の方向性を合わせに行ったほうが効率が良いです。そのためには、常にメンバーの話を聴き、選択肢を提示し続け、組織の方向性を考え続け、でも変え続ける、というよな活動が必要です。

2.自己組織的なプロセスを明確にする
ソフトウェア開発ではスクラムというプラクティスがありますが、例えばスクラムのような自己組織化を目的としたプロセスを使ったほうがうまくいきます。メンバーの意向を重視するとはいえ、一人ひとりが好きなことをやるだけで目標も規律もないというのは、成果を追っている組織とは言えませんし実際成果も出ません。逆にトップダウンで細かい作業まで指示してしまうと、メンバーは自分で考えることをやめてしまいます。そこで「規律」を求めるためにプロセスは明確にしていきます。スクラムとは関係ないですが、ホラクラシーも同様にプロセスと規律は重要のようですね。

3.マネージャーは細かな作業指示を最小限にし、方向性を示し続ける
これが最も重要で難しいポイントです。なぜ難しいかというと、マネージャーが常に方向性について考え続けなければならないからです。私の経験では、作業やプロジェクトを人を動かしてうまく進められる人であっても、方向性を考えられる人にあまり会ったことはありません。おそらくですが普段の業務とは別の脳を使うからではないでしょうか。

方向性が無いとメンバーは露頭に迷います。でもその方向性には答えがありません。答えがないということは深く考える必要があります。自分の生きるポリシー、哲学、人間とは何か、会社とは何かなど…。考え続けて決めて共感できるような形で伝える必要があります。

変化を起こし続けるのはそれほど簡単ではありませんが、うまくやれればマネージャーやリーダーが思ってもいなかったような成果が出ます。つまり、マネージャーやリーダーの器を超えていくんです。その瞬間、マネージャーやリーダーの器も大きくなり、成長することができます。